議事録作成は、会議や商談、インタビューなど、さまざまな会話の場で重要な業務として欠かせません。しかし、従来の方法では多くの時間と労力を要し、正確性を確保するのも難しいという課題がありました。

近年、生成AIの進化に伴い、議事録作成の在り方が大きく変化しつつあります。本記事では、生成AIを活用した議事録作成の現状、そのメリットとデメリット、具体的な活用方法や注意点、そしておすすめのAI議事録作成ツールについて詳しく解説します。

議事録作成の現状と課題

なぜ議事録作成が重要視されるのか

議事録は、会議における意思決定の記録、情報共有の促進、タスク管理の明確化など、多岐にわたる目的で作成されます。正確な議事録によって、後日の確認作業がスムーズになり、言った言わないのトラブルを防ぐことができ、プロジェクトを円滑に進行するために欠かせないものです。また、会議に参加できなかったメンバーへの情報共有や、過去の議論内容を振り返る際にも重要な役割を果たします。

従来の手作業やツール導入でのよくある課題

手作業による議事録作成には、以下のような課題があります。

• 長時間かかる作業： 会議の音声を何度も聞き直し、要点をまとめるには膨大な時間が必要です。例えば、1時間の会議の文字起こしと議事録作成に2〜3時間、場合によってはそれ以上かかることも珍しくありません。
• 記録の抜け漏れや主観の混入： メモを取る際に、聞き逃しや取る人の主観に基づく情報の偏りが発生しやすく、客観性や網羅性を損なうことがあります。
• フォーマットの不統一： 担当者により議事録の形式や質にバラつきが生じるため、情報が整理されにくくなる場合があります。
• 集中力の低下： 議事録作成に追われると、会議内容を聞き逃したり、議論そのものに集中できないという問題が起こります。

生成AIによる議事録作成が注目される背景

生成AIの技術が飛躍的に進化したことで、上記の課題に対する新たな解決策として、生成AIを活用した議事録作成が注目されています。生成AIは文字起こしした内容を基に、議事録形式で要約・整形することで、高品質な議事録を短時間で作成できます。これにより、議事録作成が効率化されるだけでなく、会議の生産性向上、情報共有の迅速化、そして人的ミスの削減といったメリットが期待されています。

生成AIによる議事録作成の基本

生成AIを活用した議事録作成は、会議の音声をテキスト化し、そのテキストを生成AIに渡して要約・整形させるという二段階のプロセスで構成されます。この取り組みにより、従来の議事録作成に比べて、時間の短縮と正確性の向上が格段に実現可能になりました。

主要な生成AI

現在、さまざまな生成AIサービスが展開されています。以下に代表的な文章生成AIを挙げます。

• ChatGPT： OpenAIが提供する対話型AIで、テキスト生成能力に優れています。文字起こしデータを読み込んで、要約や構造化、文体調整など、目的に応じた議事録作成が可能です。
• Gemini： Googleが開発したマルチモーダルAIで、テキストだけでなく画像や動画など多様な情報も取り扱えます。Google Workspaceとの連携により、議事録作成の効率化も期待されています。
• Claude： Anthropicが開発したAIで、長文処理能力に定評があります。複雑な議論内容を整理し、多岐にわたる情報の要約に適しています。

生成AIを使った議事録作成の流れ

生成AIを活用した議事録作成は、以下の3つのステップで進行します。

1．音声をテキスト化する（書き起こし）

会議中に録音した音声データをテキストに変換します。これには専用のAI音声認識ツールやGoogleドキュメントの音声入力機能などを活用します。

2．生成AIに要約・構造化を依頼する

テキスト化された会議内容をChatGPTなどの生成AIに入力し、要約や構造化を指示します。プロンプト次第では、「3つのトピックに分けて要点だけまとめてください」「重要な発言やアクション項目を箇条書きにしてください」といった用途に応じた形式で議事録が生成されます。「ビジネス文書として整えて」「敬語を使用してください」といった具体的な指示も可能で、トーンやスタイルの調整が柔軟に行えます。

3．トーン調整・体裁チェック・保存

生成AIによる要約の後、文体・敬語・レイアウトなどの体裁を整えます。誤認識による誤解や、AIのハルシネーション^※が発生する可能性があるため、公に公開するような議事録の場合は内容を慎重に確認する必要があります。修正後に共有や保管に適した形式で保存すれば、PDF化やクラウド文書への変換を通して、再利用や検索をスムーズに行えます。

※ AIが事実に基づかない、もっともらしい誤った情報を生成する現象のこと

議事録作成における生成AI活用のメリット

生成AIを活用した議事録作成は、忙しいビジネスパーソンにとって以下のような大きな利点をもたらします。

• 作業時間の大幅短縮： 従来では数時間を要した議事録作成が、AI音声認識と生成AIを組み合わせることで、10分〜20分程度で完了する場合もあります。これにより、担当者はより重要な業務に集中できるようになります。
• 誰でも標準的な議事録を作成可能： 経験や文章力に関係なく、誰でも整理された読みやすい議事録を作成可能です。これにより、業務が担当者に依存しにくくなり、業務の標準化が進みます。
• 会議内容の迅速な共有： 会議終了後すぐに議事録が作成されるため、関係者への情報共有を迅速に行うことができます。この結果、意思決定や次の行動への移行がスムーズに進みます。

実際に使えるプロンプト例

議事録作成で生成AIを活用する際には、プロンプトの内容が出力結果の質に大きな影響を与えます。以下では、汎用的なプロンプト例と、さらに詳細な指示を適切に行うためのコツについて紹介します。

基本プロンプト例

あなたは議事録作成の担当者です。以下の ＃文字起こし をもとに ＃制約条件 に従いながら議事録を作成してください。

＃制約条件
* ＃出力形式 の通りに出力する
* 使用された専門用語には、定義や説明を付け加える
* 文書は、読者が理解しやすいように簡潔かつ明確にする
* 本文は議題ごとに小見出しを設け、箇条書きで整理する
* 表記の揺れを避け、整然とした構成とする
* 発言者の敬称は省略する
* 専門用語は避け、誰でも理解しやすい表現を使用する
* 不明な点がある場合には、空白で出力する

＃出力形式
● *日時* ：yyyy年mm月dd日（ddd）HH時MM分～HH時MM分
● *場所* ：
● *出席者* ：
● *本文* ：（以下の ＃本文の出力形式 に従う）

＃本文の出力形式
## ［内容を要約した簡潔なタイトル］
### 概要
* ［概要］
* ［概要］
### 決定事項
* ［決定事項］
* ［決定事項］
### ToDo
* ［アクション内容］（［担当者］｜［期限］）
* ［アクション内容］（［担当者］｜［期限］）

＃入力文
（文字起こしした結果をここに入力）

プロンプトのコツ

生成AIにプロンプトを渡す際には、以下のポイントを押さえることで、期待する議事録形式での出力を得られやすくなります。

• 役割を与える（ロールプロンプト）
  • 「あなたは〇〇です」と明示して役割を付与することで、回答の方向性を明確にします。
• 出力例を提示する（few-shot）
  • 完成イメージに近い例を具体的に示すことで、生成結果のブレを抑えられます。
• 否定表現を避ける
  • 「～しないで」のような否定表現はAIが誤解しやすいため、「～してください」といった肯定表現で指示を与えると効果的です。

生成AIによる議事録作成の注意点

生成AIは議事録作成を大幅に効率化しますが、その活用にはいくつかの注意点があります。これらを理解し、適切な対策を取ることが重要です。

機密情報が学習される可能性がある

多くの生成AIツールはクラウド上で動作し、入力された情報が学習データとして利用される場合があります。これにより、会議で取り扱われる機密情報や個人情報が外部に流出してしまうリスクが生じます。特に法務、医療、行政など、高い情報管理が求められる業界では、このリスクは特に深刻です。導入前には、ツールのプライバシーポリシーやセキュリティ対策を十分に確認し、必要に応じてオンプレミス型の生成AIや、入力データが学習に使用されない法人向けプランを検討することが求められます。

内容に誤りが含まれる可能性がある

生成AIが作成する議事録には、以下のような特有の注意点があります。

• 要約の限界： AIは文脈を把握して要約を行いますが、人間が行う場合のような繊細なニュアンスや非言語情報（表情や声色等）を完全に理解することは難しいため、必ずしも完璧な結果が得られるとは限りません。
• 事実誤認： 音声認識の誤りやAIの推論ミスにより、議事録に事実とは異なる情報が含まれる可能性があります。特に固有名詞、数字、日付などが誤変換されやすい傾向があります。
• 情報の過度な整理： AIは文章の整理能力に優れていますが、その結果、議論の背景やプロセスといった重要な情報が省略されてしまう場合があります。

これらの問題を防ぐためには、生成された議事録をそのまま使用せず、必ず人間が最終確認を行い、必要に応じて修正や加筆を加えることが必要です。

事前の文字起こし作業が必要

ChatGPTなどの汎用生成AIは、直接音声データを処理することができません。そのため、会議の音声をまず文字起こしツールでテキスト化する作業が必要になります。この文字起こし作業の精度が低いと、生成AIによる要約結果の質も低下するため、精度の高い文字起こしツールを選ぶことが重要です。

さらに、文字起こしされたテキストにも誤認識や変換ミスが含まれる可能性があるため、生成AIにデータを渡す前に人間による確認や修正を行うことで、議事録の精度が大きく向上します。

失敗を防ぐための運用コツ・プロンプト設計のポイント

生成AIによる議事録作成を成功させるためには、事前に行う文字起こし作業の精度が重要です。以下に、その際の注意点を挙げます。

クリアな音声で録音する

文字起こしの精度は、元となる音声データの品質に大きく依存します。静かな環境で録音し、会議用マイクスピーカーを使用するなど、ノイズを極力減らしたクリアな音声を確保することが重要です。マイク選びのポイントは以下の記事でも解説しています。

単語登録機能を活用する

業界固有の専門用語や社内用語は、AI音声認識が誤認識しやすい傾向があります。そのため、ツールに辞書登録機能がある場合は積極的に活用し、AIの学習機能が搭載されていれば使用を継続して精度を向上させましょう。文字起こしが不完全な場合、それに基づく生成AIの処理の精度も低下してしまいます。

発言の仕方を工夫する

参加者には早口を避け、明瞭に話すことを心がけてもらいましょう。また、複数人が同時に話さないよう工夫することで、議事録作成や文字起こしの正確性が向上します。

文字起こし～要約までが完結するAI議事録作成ツール

生成AIを活用した議事録作成をより手軽かつ安全に行う方法として、専用のAI議事録作成ツールが注目されています。これらのツールは、単に文字起こしや要約を行うだけでなく、さまざまな付加価値を提供します。

メリット① 文字起こしから要約までワンストップでできる

多くのAI議事録作成ツールは、会議の音声を自動で文字起こしする機能に加え、文字起こし内容を基に自動的に要点を抽出し、簡潔な議事録として整形する能力を備えています。この仕組みによって、利用者は複数のツールを使い分ける手間を省き、議事録作成の全プロセスを一度に完了させることが可能です。また、発話者の分離機能やタイムスタンプの追加機能といった機能も組み込まれているため、より正確で分かりやすい議事録を短時間で作成することができます。

メリット② 機密情報が生成AIに学習されない

汎用型の生成AIサービスとは異なり、多くのAI議事録作成ツールでは、入力された会議内容がAIの学習データとして使用されないよう十分に配慮されています。特に法人向けに提供されるツールでは、情報セキュリティが重視されており、企業内の機密情報や個人情報が外部に流出するリスクを軽減しています。これにより、セキュリティの懸念を心配することなく、安心してAI議事録作成ツールを導入することができます。

メリット③ スタンドアローン型の生成AIであれば情報漏洩のリスクなし

情報セキュリティを最優先する企業にとって、インターネット接続を必要としないスタンドアローン型のAI議事録作成ツールは非常に有用です。これらのツールは、社内サーバーや専用デバイス上で音声認識、文字起こし、要約処理を完結するため、外部ネットワークへのデータ送信が行われません。これにより、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが可能です。

スタンドアローン型AI議事録ツール「ScribeAssist」

「ScribeAssist」は、国内シェアNo.1のAI音声認識技術「AmiVoice^®」を搭載したスタンドアローン型議事録作成サービスです。このツールは、録音から音声認識、編集、そして出力までのすべての工程をオフラインで行うことができます。そのため、インターネット接続を必要とせず、機密性の高い会議内容でも安心して運用することが可能です。

さらに、ローカル生成AI（ローカルLLM）による要約機能も装備されており、自動要約を含む一連の作業をオフライン環境で完結することができます。これにより、社内規定で生成AIの利用が制限されている場合でも、問題なく利用することが可能です。

まとめ

議事録作成は、多くのビジネスパーソンにとって負担の大きい業務ですが、生成AIの活用によって、その負担を大幅に軽減し、より質の高い情報共有が可能になる時代を迎えています。まずは、この記事で紹介した基本情報や注意点を参考にしながら、自身の業務における議事録作成の課題を明確にしてみてください。

• どのような会議で議事録が必要なのか？
• どの程度の精度が求められるのか？
• セキュリティ面でどのような配慮が必要なのか？

これらの問いを自社やチームで検討し、ChatGPTのような汎用AIから使い始めるのか、「ScribeAssist」のような専用ツールを導入するのか、小さな一歩から試してみることをお勧めします。「ScribeAssist」は無料でトライアルを提供しているため、興味がある方はぜひ以下のフォームからお問い合わせください。

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「ScribeAssist」については定期的に開催しているウェビナーで、デモンストレーションを交えて詳しくご紹介しています。ぜひこちらもお気軽にご参加ください。

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