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株主総会とは?種類や決議事項・3種類の株主総会決議について解説
目次
株主総会とは?
株主総会とは、株式会社の重要事項について意思決定を行う機関のことです。株主総会は株式会社に出資した「株主」で構成されており、下記のように極めて強力な権限を持ちます。
第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/06
ただし、株式は他人に売却可能であるため、株主総会のメンバーは一定ではあるとは限りません。
株式会社の経営にかかわる組織には取締役会もあります。取締役会とは、会社の業務執行について意思決定を行う組織です。取締役会は、株主総会で任命された3名以上の取締役と監査役で構成されており、会社の業務を執行し、代表取締役の監督や選定などを行う役割を持ちます。
第三百六十二条
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/07
株主総会と取締役会の違いは、株主総会は企業に出資した「会社の所有者」の総会であるのに対し、取締役会は「会社の経営者」の会であるという点です。
株主総会の種類
株主総会を構成する株主には「株主権」があります。株主権とは、主に下記の3つで構成されている権利です。
議決権 | 株主総会で議案への意思表示ができる権利 |
---|---|
利益配当請求権 | 会社から配当金を受け取る権利 |
残余財産分配請求権 | 会社が解散する際に、残余財産の分配を請求できる権利 |
株主権の中でも議決権は、権利行使の結果が株主全体の利益に影響する「共益権」の一種です。株主は議決権行使によって、株主総会への参加や投票ができます。
株主総会は、開催する時期の違いによって「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類があります。
定時株主総会
定時株主総会とは、事業年度が終了した後の一定時期に開催される株主総会です。定時株主総会の開催は会社法で下記の通りに規定されており、毎年開催することが株式会社の義務となっています。
第二百九十六条
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/06
定時株主総会の開催時期は明確には定められていません。しかし、株主名簿の基準日や法人税申告時期との関係により、ほとんどの会社が事業年度の終了から3か月以内に開催しています。
定時株主総会の主な議題は、当期事業年度の事業報告や決算承認、剰余金の配当などです。また、会社の財務情報や成長戦略など経営についての説明も行われます。
臨時株主総会
臨時株主総会とは、定時株主総会以外のタイミングで、臨時で開催される株主総会のことです。会社法では、必要がある場合はいつでも株主総会の招集ができると定めています。
第二百九十六条
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/06
臨時株主総会には開催日や開催場所についての制限がありません。取締役会が開催事項決定などの手続きを行い、株主に対して招集通知をします。
臨時株主総会が開催される主なケースは、会社の重要事項を緊急に決定しなければならないときです。臨時株主総会の議題は開催目的によって異なるものの、例を挙げると「会社内の不祥事に対応しなければならない」「資本金を増額したい」などがあります。
株主総会の主な決議事項
株主総会の実施目的は議題についての意思決定であり、議題なしに株主総会を開催することはできません。
また、取締役会を設置している会社と設置していない会社とでは、株主総会の決議事項が異なります。取締役会を設置している会社では、株式総会の決議事項が下記の通りに制限されています。
第二百九十五条
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/06
以下では、株主総会の主な決議事項3つと、それぞれの事項でどのような内容が議題になるかを解説します。
会社の経営に関する事項
会社の経営に関する事項とは、経営環境や組織形態といった会社のあり方に大きく影響する決議事項です。議題の具体例としては、下記の内容が挙げられます。
- 定款変更
- 事業譲渡
- 会社合併
- 株式移転
- 会社の解散 など
いずれも会社の所有者である株主にとって重要性が高い内容であり、会社側はあらかじめ株主の承認を得なければなりません。会社の経営に関する事項を決める際は株主総会を開催し、議題に沿った方法で決議を行う必要があります。
株主の利害に関する事項
株主の利害に関する事項とは、株主自身の利益・損害に直接関係する決議事項です。具体的には下記の議題があります。
- 剰余金の配当
- 非公開会社での新株発行
- 株式の併合
- 自己株式の取得 など
剰余金の配当は株主の利益に関係します。一方で非公開会社での新株発行や株式の併合は、主に株主の損害と関係する内容です。株主の利害に関する事項については、株主全体の意思決定を示すために株主総会を開催する必要があります。
役員の選任・解任・役員報酬に関する事項
役員の選任・解任・役員報酬に関する事項は、取締役会を構成する役員についての決議事項です。主な議題は下記の通りです。
- 取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任と解任
- 役員報酬額の決定 など
株式会社は所有と経営の分離が原則です。会社の所有者である株主は、株主総会で選任した取締役に経営を任せることになります。また、取締役会で役員が自分に高額な報酬額を設定するのを防ぐため、役員報酬額は株主総会で決定されます。
株主総会決議の種類3つ
株主総会の決議では、株主は保有する株式1株につき1票の議決権があります。決議は原則として多数決で決定するため、株式を多く取得している株主ほど影響力・発言力は大きくなることが特徴です。
第三百九条
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
引用:e-Gov法令検索「会社法」引用日2023/04/06
株主総会の決議は、決議事項の重要性や性質で「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3種類に分けられます。決議の種類によっては可決に必要なラインが異なるため、それぞれの違いを把握しましょう。
普通決議
普通決議は、株主総会における一般的な決議方法です。株主総会で取り上げられる決議事項の多くは普通決議によって進められます。代表的な普通決議の決議事項は下記の通りです。
- 自己株式の取得
- 役員の選解任
- 株主総会議長の選任
- 総会検査役の選任
- 資本金の増資
- 準備金の増額、減額
- 計算書類の承認
- 剰余金の配当 など
普通決議で株主総会を開催するには、全議決権の過半数を有する株主の出席が必要です。また、議案の決議要件は、出席者が有する議決権の過半数と設定されています。
特別決議
特別決議は、会社や株主にとって重要性が高い事項を取り決めるための決議方法です。特別決議で扱う決議事項には、下記のようなものがあります。
- 定款変更
- 株式の併合
- 資本金の減資
- 会社の解散 など
特別決議で株主総会を開催するには、普通決議と同様に、全議決権の過半数を有する株主の出席が必要です。一方で議案の決議要件は、出席者が有する議決権の2/3以上です。決議事項の重要性が高いことにより、普通決議よりも必要な賛成数が多くなっています。
特殊決議
特殊決議は、特別決議で扱う決議事項よりも、さらに重要性が高い事項を取り決めるための決議方法です。特殊決議の対象となる決議事項としては、下記の内容が挙げられます。
- 公開会社から非公開会社になるための定款変更
- 株主ごとに異なる取り扱いを行う旨についての定款変更 など
特殊決議では、株主総会の開催にかかわる出席者数の要件はありません。一方で、決議要件は厳しく設定されており、下記の条件をいずれも満たす必要があります。
- 議決権を有する株主の半数以上が賛成
- 決議事項の性質により異なる
- 「公開会社から非公開会社になるための定款変更」の場合:出席者が有する議決権の2/3以上
- 「株主ごとに異なる取り扱いを行う旨についての定款変更」の場合:総株主の議決権の3/4以上
出席株主の頭数と議決権数の両方が求められるため、大口株主の意向だけでは可決が難しい点が、特殊決議の特徴です。
まとめ
株主総会とは、株式会社への出資者である株主が、重要事項について意思決定を行う機関です。株主には保有する株式1株につき1票の議決権があり、行使することで株主総会への参加や投票ができます。
株主総会の主な議題は、会社の経営、株主の利害、役員の選任・解任・役員報酬決定という3つの事項です。決議には普通決議・特殊決議・特別決議の3種類があり、後者ほど重要な事項を取り決めるため、可決のラインが厳しくなっています。
株主総会を運用する際には、正確な議事録の作成が重要です。議事録作成に課題を抱えている方には、音声認識サービスの導入をおすすめします。