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働き方改革とは?改革の目的と国の取り組み7つを解説!
「働き方改革」と耳にするものの、具体的にどういった内容の改革なのか言葉にできない方もいるのではないでしょうか。働き方改革を簡単に説明すると、労働者が自分にあった働き方を選べるようになるための改革です。年次有給の取得義務化も、働き方改革の取り組みの1つになります。
当記事では、働き方改革の意味をより詳しく説明した後に、働き方改革の目的と取り組みについて解説します。会社や自分の労働環境を見直したいという方は、ぜひ参考にしてください。
1. 働き方改革とは?
厚生労働省によると、働き方改革は下記のように定義されています。
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。
引用:厚生労働省「NEXT WORKSTYLE 働き方改革広がる」引用日2023/03/16
政府は働く方がそれぞれの事情に応じて、多様で柔軟な働き方を自ら選べるようになるために、法改正などに取り組んでいます。働く方の持つそれぞれの事情とは、「育児中なので時短で勤務したい」「介護と仕事を両立させたい」などの事情です。
国は働き方改革によって働く方一人ひとりが、よりよい将来の展望を持てる環境を促進しています。
2. 働き方改革の目的
日本は少子高齢化に伴う労働力不足や、動労者のニーズの多様化という課題に直面しています。課題解決には投資や新技術による生産性アップや働く機会の拡大、働く方の意欲と能力を発揮できる環境づくりが大切です。
働き方改革によって働く方それぞれが多様な働き方を選べる社会を実現できれば、経済成長と賃上げの好循環を築けます。
ここでは、働き方改革の目的を「出生率の回復」「労働人口の増加」「労働生産性の向上」の3つのポイントに分け、詳しく解説します。
2-1. 出生率を回復させる
労働力不足を解消するには、出生率を上げて少子高齢化を止める必要があります。しかし、出生率は年々減少傾向にあり、2019年では1.36、2021年では1.30となっています。
出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
働く女性が増加傾向にある一方で、仕事と育児を両立しにくい環境や結婚・出産・育児により失われるキャリアなどの問題から、出産に消極的な方も多くなっています。国は女性が出産後にも働きやすい環境を整備することで、出生率の上昇につなげたいと考えています。
2-2. 労働人口を増加させる
「労働力」と認識される「生産年齢人口」は、15歳以上65歳未満の人口層です。日本の生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少し、2050年には5,275万人に減少すると見込まれています。
労働人口を増加させるには、生産年齢人口に該当する年齢の方だけでなく、高齢者を含めた働く意欲のある方を積極的に登用することが大切です。
働き方改革によって労働環境を多様化することで、高齢者や育児中・介護中の方、障がいや難病を持った方も、一人ひとりに合った環境で活躍できます。働き方改革の推進は、労働人口の増加・改善につながるでしょう。
2-3. 労働生産性を向上させる
労働生産性とは、「労働者1人当たりが生み出す成果」または「1時間当たりに生み出す成果」の指標です。労働生産性は国の経済成長に役立ちますが、日本における1人当たりの労働生産性はOECD加盟38か国中29位です。日本の労働生産性のランクは、西欧諸国で労働生産性が低いとされる英国やスペインよりも順位が低くなっています。
出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」
労働生産性を向上するには、効率性をアップする物的・人的な投資を強化したり、マネジメントを見直したりなど労働者1人当たりの生産性を高めるための変化が必要です。
3. 働き方改革における取り組み
働き方改革には、企業側と労働者側のそれぞれに以下のようなメリットがあります。
企業側のメリット | 労働者側のメリット |
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働き方を改革するにあたって、国ではさまざまな取り組みを行っています。ここでは、働き方改革の実現に向けた具体的な施策を7つ紹介します。
3-1. 時間外労働の上限規制
長時間労働は、仕事とプライベートの両立を困難にしたり、女性のキャリア形成や男性の家庭参加を阻んだりする原因になります。そこで、長時間労働への対策として働き方改革の一環として労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が設けられました。
法改正により時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間とされ、臨時的かつ特別な事情がない限り上限は超えられません。特別な事情があって労使合意するケースでも、下記の時間外労働を超えることは不可とされています。
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内
- 月100時間未満
時間外労働の上限規制は大企業の場合は2019年4月、中小企業の場合は2020年4月に施行されています。
3-2. 時間外労働の割増賃金率の引き上げ
働く方が健康を保ちながら仕事以外の時間を確保して働けるよう、時間外労働の割増賃金率を上げる規定が用いられています。
月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率について、中小企業の場合は割増賃金率25%に据え置かれていました。しかし、中小企業に対する適用猶予は廃止され、2023年4月以降、中小企業の割増賃金率は大企業と同様の50%となります。
出典:厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」
時間外労働の割増賃金率の引き上げを受けて、企業の業務効率化は急務となっています。業務効率を高めるには、ツールの利用が不可欠です。例えば、AI音声認識文字起こし支援アプリケーションを活用すれば、Web会議や商談の議事録作成業務を大幅に短縮できます。
3-3. 年次有給休暇の取得義務化
年次有給休暇は、働く方が心身のリフレッシュを図ることを目的とした仕組みです。原則として、働く方が請求する時季に年次有給休暇を付与することになっています。しかし、これまでは職場への配慮や取得を請求する行為のためらいなどから、年次有給休暇の取得率は比較的低調でした。
年次有給休暇の取得率の改善として、国は2019年4月に改正労働基準法を施行しますすべての企業では年10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者に対し、そのうち5日は使用者が時季を指定して取得するよう義務づけられました。
3-4. 雇用形態に関係なく公正な待遇の確保
同じ企業で働く正規雇用労働者・非正規雇用労働者の間にある、不合理な待遇差を解消することも、働き方改革の重要な取り組みの1つです。
雇用形態による不合理な待遇差の解消として国は、同一労働同一賃金を導入しています。具体的な内容は、派遣労働者の派遣先または同種業務労働者との均等待遇実施や、待遇差の内容・理由の説明を義務化した点などです。雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を定めた法律は、2020年4月に施行されています。中小企業の場合は、2021年4月の適用です。
働く方がどのような雇用形態を選んでも待遇に納得して働けるようにすることで、柔軟かつ多様な働き方が実現します。
3-5. 勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上のインターバル(休息時間)を設けることです。勤務間インターバルにより、働く方の生活時間や睡眠時間が確保できるようになります。睡眠時間や休息時間を確保することで、ライフ・ワーク・バランスを保ちながら働けるのもメリットです。
労働時間等設定改善法の改正によって2019年4月より、勤務間インターバル制度を導入することが事業主の努力義務となりました。決めた時刻以降の勤務と翌日の始業時刻以前の労働を禁止するなどの仕組みを用いて、勤務間インターバルを確保できます。
3-6. フレックスタイム制の拡充
フレックスタイム制とは、働く方が始業・終業時刻や労働時間を自ら決めることで、仕事と生活のバランスを取りながら働ける制度です。
働き方改革の一環としてフレックスタイム制に関する法改正が行われ、2019年4月に施行されました。法改正では、フレックスタイム制の清算期間の上限を1か月から3か月に延長し、より柔軟な働き方を選択できるようになっています。
3-7. 産業医と産業保健機能の強化
長時間労働やメンタルヘルス不調など、健康リスクの高い状態にある労働者を見逃さないためには、産業医による面接指導や健康相談の実施が大切です。国は働き方改革の取り組みの1つとして2019年4月に改正労働安全衛生法を施行し、産業医と産業保健機能の強化を図りました。
法改正により事業主は必要な情報を産業医に提供し、産業医の勧告を受けた場合は衛生委員会に報告することなどが義務づけられています。
まとめ
働き方改革とは、育児や介護など働く方の事情に応じた多様な働き方を自分で選択できるようにするための改革です。日本の出生率や労働人口、労働生産性が低下していることから、それぞれを向上させるのを目的にさまざまな取り組みが進められています。
働き方改革によって時間外労働の上限規制が設けられたり、年次有給休暇の取得が義務づけられたりなどさまざまな変化が起こっています。雇用形態が異なることで起こる不合理な待遇差の解消やフレックスタイム制の拡充も、働き方改革の取り組みの1つです。