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教育機関における議事録作成をAI音声認識で効率化!私立学校法 改正ポイント解説付き

近年、教育現場では教職員の働き方改革が喫緊の課題となっており、業務効率化の推進が強く求められています。特に、会議の議事録作成は多くの時間と労力を要する業務であり、その負担軽減が重要視されています。
本記事では、議事録作成業務をAI音声認識で効率化する方法と、2025年4月からの私立学校法の改正により義務化された理事会や評議員会の議事録作成についても解説します。
目次
私立学校法における議事録作成の重要性
2025年4月からの私立学校法の改正により、理事会や評議員会の議事録作成が法令で義務付けられるようになりました。そのため、議事録の記載事項や管理体制の重要性はさらに高まっています。これらの議事録は、会議における意思決定のプロセスや決定事項、責任の所在を明確にする上で不可欠な記録であり、学校法人のガバナンス強化と情報公開の推進に繋がります。
第一款 理事会及び理事 第三目 理事会の運営 (理事会の議事録) 第四十三条 理事会の議事については、文部科学省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。 2 前項の議事録が書面をもつて作成されているときは、理事会に出席した理事(議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会で定めた二人以上の理事とする旨の寄附行為の定めがある場合にあつては、当該理事)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 3 第一項の議事録が電磁的記録をもつて作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、文部科学省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 5 学校法人は、理事会の日から十年間、第一項の議事録をその主たる事務所に備え置かなければならない。 |
第三款 評議員会及び評議員 第三目 評議員会の運営 (評議員会の議事録) 第七十八条 評議員会の議事については、文部科学省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。 2 学校法人は、評議員会の日から十年間、前項の議事録をその主たる事務所に備え置かなければならない。 |
引用:e-Gov法令検索「私立学校法」引用日 2025/7/9
理事会における議事録作成の基本と私立学校法
理事会で求められる議事録作成
私立学校法では、学校法人の最高意思決定機関である理事会の議事録作成が義務付けられています。これは、透明性の確保と適切な法人運営のために極めて重要です。議事録には、会議の内容、決定事項、議事の経過の概要、議決の結果などを正確に記録し、関係者間で共有する必要があります。これにより、後日「言った言わない」といった認識の相違を防ぎ、責任の所在を明確にすることができます。
2025年法改正の要点と実務ポイント
2025年4月1日から施行される私立学校法改正は、学校法人のガバナンス強化と情報公開の推進を目的としています。この改正では、理事・理事会、監事、評議員・評議員会の権限分配が整理され、より実効性のある運営体制が求められます。
具体的な変更点として、理事会および評議員会の招集、決議、議事録等に関する具体的な内容が法定されます。あらゆる理事会決議について、「議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する」(改正私学法第43条第4項)というルールが設けられたため、全ての理事会決議において各理事の賛否を議事録に記載しておくことが望ましいとされています。
文部科学省は理事会議事録のひな形※1を公表しており、これらを参考に適切な議事録作成を行うことが求められます。
※1 出典:文部科学省 私立学校法の改正について(令和5年改正)(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html)
従来の議事録作成の課題
手作業による文字起こしと業務負担
従来の議事録作成は、会議の音声をICレコーダーなどで録音し、それを聞き返しながら手作業で文字起こしを行うことが一般的でした。この作業は非常に時間がかかり、議事録作成担当者にとって大きな業務負担となっていました。特に、正確な記録が求められる理事会などの重要な会議では、何度も音声を聞き返す必要があり、数日を要することもありました。
外部委託・Web会議システムでは対応が難しい場合も
業務負担軽減のため、文字起こしを外部委託するケースもありましたが、コスト的な負担が大きく、また機密情報を含む会議の場合にはセキュリティ上の懸念から外部委託が難しいという課題がありました。
また、Web会議システムの文字起こし機能も存在しますが、認識精度が低く、大幅な手直しが必要となるため、実用には至らないケースが少なくありませんでした。
コスト・時間的に問題が発生
手作業による文字起こしや外部委託、精度が低いのWeb会議システムの文字起こし機能の利用は、結果的にコストと時間という面で様々な問題を引き起こしていました。担当者の人件費や外部委託費用が増大するだけでなく、議事録作成に時間がかかることで情報共有が遅れ、意思決定や次のアクションの実行に遅延が生じるなど、業務全体の非効率化を招いていました。
AI音声認識による議事録作成の業務効率化
AI音声認識導入で削減できる業務負担
AI音声認識技術を活用した議事録作成ツールを導入することで、従来の議事録作成にかかる業務負担を大幅に削減できます。AIが会議の音声をリアルタイムで文字起こしし、要点を自動で整理・記録するため、担当者は手作業での文字起こしから解放され、浮いた時間を他の重要な業務に充てることが可能になります。これにより、今まで数時間かかっていた会議の文字起こしが、早ければ1時間もかからずに完了する事例も報告されています。
スタンドアローン型を選ぶなど、セキュリティ面も重要
議事録には機密情報が含まれることが多いため、セキュリティは重要な検討事項です。AI音声認識ツールには、クラウド上で動作するSaaS型と、インターネット接続なしで利用できるスタンドアローン型があります。
スタンドアローン型の文字起こしツールは、音声データや文字起こし結果が外部に出ないため、機密性の高い情報を扱う学校法人にとって最適な選択肢となり得ます。例えば、「ScribeAssist」はスタンドアローン型でありながら高い文字起こし精度を持ち、データが外部に漏れるリスクがないため、多くの機関で採用されています。

音声認識精度向上による修正作業の減少
AI音声認識技術は日々進化しており、その認識精度は飛躍的に向上しています。高精度のツールを導入することで、文字起こし後の修正作業を大幅に減らすことができます。特に、専門用語や固有名詞を事前に辞書登録する機能や、誤認識の修正データをAIが学習することで継続的に精度が向上する仕組みを持つツールは、より効率的な議事録作成に貢献します。これにより、議事録作成の負担が軽減され、全体的な業務効率が向上します。
学校法人におけるAI音声認識の導入事例
導入事例① 国立大学法人 九州工業大学
九州工業大学では、総務部が複数の会議で議事録作成を担当しており、手作業による文字起こしや外部委託が業務的・コスト的に大きな負担となっていました。こうした課題を解決するため、AI音声認識を活用した議事録作成サービス「ScribeAssist」の導入を検討しました。
選定の決め手となったのは、文字起こしの認識精度が高く、かつスタンドアローン型であるため音声や文字起こし結果がクラウドを含め外部に出ないというセキュリティ面での評価でした。導入の結果、数時間かかっていた会議の文字起こしが、早ければ1時間もかからずに完了するようになり、外部委託費の削減にも大きな効果がありました。現在では大学内の様々な会議で活用され、手直しがほとんど不要な精度で文字起こしされるため、大学全体で業務負担軽減に繋がっています。
導入事例② 国立大学法人 大分大学
国立大学法人 大分大学では、ICレコーダーなどで録音された音声をもとに、手作業で文字起こしを行う必要があり、膨大な時間と労力を要していました。場合によっては外部業者に委託することもありましたが、コスト的な負担が大きい上、発言確認が必要な際にも手作業で対応する必要があり、さらなる作業負荷が発生していました。
こうした課題を解決するため、大分大学ではAI音声認識ツール「ScribeAssist」を導入。選定にあたり、ツールの高い文字起こし精度に加え、スタンドアローン型であるためデータが外部に漏れるリスクがない点が採用の決め手となりました。
「ScribeAssist」を利用することで、手作業の文字起こしが大幅に効率化されました。これにより、以前は数時間かかっていた議事録作成作業が、早い場合には1時間以内で完了するようになり、作業時間の短縮が実現しました。また、外部業者への依頼が不要となり、経費削減にも成功しました。
小学校・中学校・高等学校などでの活用も
AI音声認識ツールは大学だけでなく、小中学校や高等学校など、多様な学校種別での活用も可能です。教職員の会議、研修会、保護者会、生徒指導に関する会議など、様々な場面で議事録作成の効率化に貢献します。
例えば、遠隔授業やオンラインでの学習指導が増える中で、授業内容の記録や振り返り、生徒との個別面談の記録などにも活用できます。また、学校運営における意思決定の透明性向上や、情報共有の迅速化にも繋がるため、学校全体の業務改善に寄与します。
利用者の声と全学的な業務改善の展望
AI議事録ツールの利用者からは、「手直しの時間が減り、作業負担が軽減された」「短時間で正確な議事録が作成できる」といった声が寄せられています。議事録作成の効率化は、担当者の心理的負担を軽減し、本来の業務に集中できる環境を創出します。
将来的には、AI議事録作成ツールを他の部署にも導入を拡大し、全学的な業務改善や標準化、教職員の負担軽減を目指すことが可能です。会議内容の記録が速く正確になることで、情報共有がスムーズになり、組織全体の意思決定の迅速化にも繋がるでしょう。
実践のための法令・書式・運用上の留意点

令和5年改正 私立学校法の条文引用とポイント解説
私立学校法人にとって、議事録作成は単なる業務効率化だけでなく、法令遵守の観点からも極めて重要です。令和5年改正(令和7年4月施行)の私立学校法は、学校法人のガバナンス強化と情報公開に大きな影響を与えます。
(理事会の議事録) 第四十三条 理事会の議事については、文部科学省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。 4 (前略)議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。 |
この改正により、議事録の記載内容の正確性と、各理事の意思表示の明確化がより一層求められます。
(理事の忠実義務) 第三十八条 理事は、法令及び寄附行為を遵守し、学校法人のため忠実にその職務を行わなければならない。 |
理事会の議事録は、理事の職務執行状況を記録し、その忠実義務の履行を示す重要な証拠となります。
(計算書類等の監査等) 第百四条 計算書類等は、文部科学省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。 |
監事監査の対象となる計算関係書類等に関する理事会の議論も、議事録に適切に記録される必要があります。
引用:e-Gov法令検索「私立学校法」引用日 2025/7/9
文部科学省公表の議事録への記載事項例
文部科学省は、理事会議事録のひな形を公表しており、これを参考に作成することが推奨されます。主な記載事項としては、以下の項目が挙げられます。
- 会議名(理事会、定時評議員会など)
- 開催日時
- 開催場所
- 出席者
– 理事・監事の総数
– 対面・Web会議システムによる出席の別を明記 - 欠席者
- 議長
- 決議に特別の利害関係を有する理事
- 議題
- 理事会の議事の経過の要領及びその結果
- 議事録署名人(自筆署名または押印)
特にWeb会議システムで出席者がいる場合、出席方法(例:Web会議システムにより参加、自宅内など)を詳細に記載することが求められます。
まとめ
AI音声認識を活用した議事録作成の今後の発展性
AI音声認識技術の進化は目覚ましく、議事録作成の自動化は今後もさらに高度化していくと予想されます。リアルタイムでの文字起こし、話者分離、要約機能の精度向上に加え、特定の専門用語や業界用語への対応、多言語対応なども進み、より汎用性の高いツールが登場するでしょう。これにより、議事録作成だけでなく、会議で議論された内容の分析や、タスク管理システムとの連携など、活用の幅が広がることが期待されます。
効率化とコンプライアンスの両立を目指して
学校法人において、理事会議事録作成の効率化は喫緊の課題ですが、同時に私立学校法に基づくコンプライアンス遵守も極めて重要です。AI音声認識ツールを導入する際には、単に業務効率化だけでなく、法令要件を満たした正確な議事録作成が可能であるか、情報セキュリティが確保されているかといった点を総合的に評価する必要があります。
AI議事録作成ツールは、教職員の業務負担を軽減し、より本質的な教育活動や学校運営に注力できる時間を提供します。効率化とコンプライアンスを両立させることで、学校法人はより強固なガバナンス体制を築き、社会からの信頼を得て、持続的な発展を目指すことができるでしょう。
本記事でご紹介した「ScribeAssist」は、議事録作成以外にもリアルタイム字幕表示機能や、議事録をAI要約によって自動で作成できるできる機能も搭載しています。
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