コラム
column
DX推進とは?IT化との違いやメリット・注目される背景を解説
ITやデジタル技術が進化するなか、注目されているのがDX推進です。DX推進はビジネスシーンにおいて重要とされており、企業の経営をも左右します。
今回はDX推進について、言葉の意味や企業に導入するメリット、企業がDXを推進する際の押さえたいポイントを解説します。DX推進が注目される理由についてもまとめているので、DX推進について知識を得て企業の生存率を高めたい、業務の効率化を図りたいという方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
目次
DX推進とは?
DX推進とは、企業全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進める活動です。
そもそもDXとは、デジタル技術によって生活やビジネスが変容することを指します。経済産業省によると、DXの定義は下記の通りです。
DXの定義は次のとおりとする。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」/引用日2023/04/06
DXにおいて活用されるデジタル技術は、AI・IoT・ビッグデータなどが一例です。DX推進を行うことで、組織体制の見直しや課題解決につなげられます。
DX推進とIT化の違い
企業のDXを推し進めるDX推進は、IT化と混同されるケースが少なくありません。DX推進とIT化はどちらもデジタル技術を活用する点で共通しているものの、目的に大きな違いがあります。
まずIT化とは、既存業務の改善を図るためにデジタル技術を導入・活用することです。業務効率化を目的としたデジタル化の意味合いが強く、社内連絡の方法を電話からメールに切り替えるケースがIT化の典型事例と言えます。IT化はデジタル技術を活用した時点で完了しており、他の業務や企業全体にまで変容を及ぼしません。
対して、DX推進におけるデジタル技術の活用は、あくまでもDXを進めるための手段です。DX推進の目的は業務効率化や生産性向上にとどまらず、企業のあり方やビジネスの仕組みに抜本的な変容を起こすことを目指します。
DX推進のメリット
企業がDX推進をすることで、ビジネスでデータ活用がしやすくなったり、市場や消費行動の変化に柔軟な対応ができたりするメリットがあります。レガシーシステムからの脱却により、システム維持費の削減もできるでしょう。
DX推進は他にも、以下に挙げるような多くのメリットがあります。
新サービスやビジネスモデルの開発ができる
DX推進をすることで新しいサービスやビジネスモデルの開発ができます。デジタル技術の導入・活用によって、今まで見えていなかった顧客ニーズを発見したり、従来と異なるサービス提供の方法が選択できたりするためです。
新サービスやビジネスモデルの開発は競合他社との差別化につながり、企業競争力を高められます。1つの事業・サービスに頼らない経営体制が取れるようになり、デジタル社会の流れやニーズの変化にも適応しやすくなるでしょう。
働き方改革が実現する
働き方改革関連法の施行により、企業にとって従業員の働き方改革は重要な課題となっています。DX推進は業務のデジタル化を進めて、働き方改革が実現できる点がメリットです。
アナログで行っていた作業をデジタル化すると、従業員の業務負担軽減や長時間労働の是正ができます。短時間勤務やテレワークといった多様な働き方が選べるようになり、出産・育児をする女性の活躍も後押しできるでしょう。
業務の生産性が向上しコスト削減になる
DX推進を行う企業ではデジタル技術が積極的に活用されて、業務進捗を簡単に把握できるようになったり、業務の一部を自動化できたりします。業務フローが最適化されることにより、生産性の向上が可能です。
また、デジタル技術によって業務の正確性が向上し、業務全体で発生していたムリ・ムダ・ムラが抑制できます。余剰な作業時間や人件費の発見につながり、コスト削減ができる点もメリットです。
BCP対策を充実させられる
BCP(事業継続計画)とは、自然災害などの緊急時においても事業活動を継続できるよう、対策方法・手段などをあらかじめ取り決めておく計画のことです。デジタル技術の活用を進めるDX推進は、BCP対策の充実につながります。
基幹システムのクラウド化などが、DX推進によって実現できるBCP対策の一例です。業務の拠点や機能を分散させるには、デジタル技術の活用が必須と言えます。
DX推進が注目される理由
DX推進が注目されている理由として、代表的な2つの内容を紹介します。
・2025年の崖
企業の既存システムには、顧客情報が部門ごとに分断されていて効率的に活用できない、複雑化・ブラックボックス化した部分が多いといった課題があります。老朽化したシステムが抱える課題により、2025年を節目として多くの日本企業が直面するとされている危機が「2025年の崖」です。
2025年の崖について、経済産業省は下記の通りに警鐘を鳴らしています。
この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。
引用:経済産業省「D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」/引用日2023/04/06
企業が2025年の崖を乗り越える方法が、ビジネスにおけるDXの推進です。DX推進で新しいデジタル技術を導入し、事業活動やビジネスモデルを変容させることで、デジタル競争で生き残る確率が高まります。
・デジタル化による消費者行動の変化
DXはビジネスだけではなく、生活にも影響を及ぼしています。インターネットの普及によるECサイトの利用や、スマホアプリでの購入が一般化したように、デジタル化による消費者行動の変化に企業は対応できなければなりません。
消費者の生活にもかかわるデジタル化の流れに対応できなければ、企業は多くの顧客や利益を失う可能性もあるでしょう。企業が消費者行動の変化を鋭敏に感じ取り、新しいサービスやビジネスモデルを創出すると、市場における企業価値を高め続けられます。
DXを推進するためのポイント4つ
企業のDX推進は、部門横断のDX人材で組織されたDX推進チームが主導で進めます。
企業を取り巻く環境や抱える課題は各社で違いがあり、DX推進の進め方も異なります。DX化を成功させるには、DXの大まかな流れを把握し、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
最後に、DX推進の流れを4つのポイントに分けて解説します。
DX推進の目的を設定する
まずはDX推進の目的を設定しましょう。目的を設定すると具体的な計画・戦略が立てやすくなり、DX推進に対する全社的な意識の共有も図れます。
DX推進の目的は、「どの分野でデジタル化を進めるか」「DX推進で何を達成したいか」といった方針を明示しなければなりません。DX推進チームは経営トップともコミュニケーションを取り、企業が掲げる経営ビジョンに沿う形で、DX推進の目的を設定します。
現状を把握して組織全体でデジタル化を進める
DX推進の目的を設定した後は、企業内の現状を把握して組織全体でデジタル化を進めます。デジタル化すべきポイントが複数ある場合は、現場の反対意見が出にくい細かな業務を優先することがおすすめです。
例として、会議などに欠かせない議事録作成業務は、自動の文字起こし機能の搭載された議事録作成ツールを導入することでデジタル化ができます。
AI音声認識議事録作成支援ソリューション ScribeAssist
細かな業務のデジタル化を実現した後に、組織全体にかかわる大きな課題に取り組むようにしましょう。
組織構造とビジネスモデルを見直す
DX推進によって業務効率化やコスト削減が実現すると、人材や資金などの企業が投入できるリソースに余裕が生まれます。組織構造とビジネスモデルの見直しをして、リソースの余裕をより重要性が高い分野に投入しましょう。
見直しの過程で、新たな課題やデジタル化できる業務プロセスを発見できる可能性もあります。デジタル化をするだけで満足せず、導入したデジタル技術も評価しましょう。
長期的な視野でPDCAを回し続ける
DX推進計画を一通り運用したら、取り組んだ施策を評価します。目的が達成できたか、どのような効果があったかを分析し、改善点がないかを検討しましょう。
企業のDX推進は簡単に実現できるプロジェクトではありません。長期的な視野でPDCAを回し続けて、DX推進体制を根付かせることで、社会の変化に柔軟な対応ができる組織を構築できます。
まとめ
DX推進とは、企業全体でDXを推し進める活動のことで、IT化とは目的が異なります。DX推進は、企業のあり方やビジネスの仕組みに抜本的な変容を起こすことが目的です。
DX推進により、新サービスやビジネスモデルの開発ができる他、BCP対策の充実といったメリットがあります。またDX推進で消費者行動の変化を把握し、事業活動やビジネスモデルを変容させることで、市場における企業価値を高め続けることにもつながります。
DXを推進するときは、目的の設定、企業内の現状に合わせたデジタル化、組織構造とビジネスモデルの見直し、長期的な視野でPDCAを回しDX推進体制を根付かせるなどのポイントを押さえましょう。